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端渓硯
中国広東省広州の西方100kmほどのところに、肇慶という町がある。この町は西江という河に臨んでいて、東に斧柯山(ふかざん)がそびえる。この岩山の間を曲がりくねって流れ、西江に注ぐ谷川を端渓(たんけい)という。深山幽谷と形容される美しいこの場所で端渓硯の原石が掘り出される。
端渓の石が硯に使われるようになったのは唐代からで、宋代に量産されるようになって一躍有名になった。このころ日本にも渡って来たといわれる[3]。紫色を基調にした美しい石で、石の中の淡緑色の斑点を「眼」(がん)という。鳥の眼のようなこの模様は石蓮虫の化石といわれてきたが、石眼は一種の含鉄質結核体であることが実証された。つまり酸化鉄などの鉄の化合物が磁気を帯びて集まり形成されたものである。こうした含鉄質結核体が沈積し埋蔵されたあとも、岩石生成過程でたえず変化して鉄質成分を集め、暈の数が幾重もある石品を形成した。実用には関係ないものだが大変珍重される。端渓の石は細かい彫刻にも向き、様々な意匠の彫刻を施した硯が多く見られる。端渓硯の価値は、眼の有無、彫刻の精巧さ、色合い、模様などによるもので、いずれも骨董的な価値である。
端渓硯には採掘される坑によって以下のようなランクがある。
老坑:最高級の硯材。ここから産出する硯材のみを「水巌」と称する。
坑仔巌:老坑に次ぐ。
麻仔坑:かつては老坑に匹敵するという評価もされた。
宋坑:宋代に開発開始。比較的安価。
梅花坑:色合いに趣はあるが硯材としては下級。
緑石坑:現代物はあまり良質ではない。
代表的な唐硯 端渓硯 歙州硯 洮河緑石硯 澄泥硯 松花江緑石硯 紅糸石硯
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